ラフマニノフ 楽興の時 Op.16 全曲の動画集です。
「ピティナ・ピアノ曲事典」より
ラフマニノフが1896年に作曲した、6曲から成る作品集。作曲家でありながら20世紀最高のピアニストとしても活躍したラフマニノフらしく、演奏には極めて高度な技巧を必要とする。奇数番目の曲は比較的ゆっくりと、偶数番目の曲は対照的にきわめて速く劇的な雰囲気を持ち、全体が、ロシアの荒涼とした大地を覆う刹那の集積と仄暗く美しい情景に彩られている。
1.変ロ短調 / Moments musicaux op.16-1 b moll。冒頭から絶対零度の世界に落ちていくような儚げな哀しみを湛えた作品。
2.変ホ短調 / Moments musicaux op.16-2 es moll。やるせない感情の激昂を劇的に表現した急速な作品。
3.ロ短調 / Moments musicaux op.16-3 h moll。「アンダンテ・カンタービレ」の指示のとおり、ゆっくりと息の長い叙情的な美しい旋律が、綿々たる情緒を感じさせる。
4.ホ短調 / Moments musicaux op.16-4 e moll。急速な左手のパッセージに乗って情熱的なメロディが奏される。
5.変ニ長調 / Moments musicaux op.16-5 Des dur。曲集に淡い光が差し込むように、優しさに満ちた長調の作品。
6.ハ長調 / Moments musicaux op.16-6 C dur。全曲を締めくくる堂々とした作品。
「ピティナ・ピアノ曲事典」より
ロシアのピアニスト、作曲家、指揮者。苦学してモスクワ音楽院のピアノ科と作曲科を通常より1年早く卒業。特に作曲は大金章という最高成績を受けた。1892年、卒業後すぐに出版した前奏曲嬰ハ短調は、さっそく人気の作品となった。が、交響曲第1番の不評が原因で一時作曲を断念する。1902年、ピアノ協奏曲第2番を自ら初演して表舞台に返り咲き、劇場で指揮者を務めた後、06年にドレスデンに移ってからしばらくは作曲に専念した。09年に渡米、自作を演奏するピアニストとして名声を高めた。ロシア革命の混乱をかわしつつヨーロッパとアメリカで演奏活動を行い、20年代後半はヨーロッパにとどまろうと努力したが、31年にソヴィエト連邦の体制を批判したため、政府はかれの作品の上演を禁止した(これは2年ほどで解除された))。晩年は新たな戦争への危機感からアメリカへ戻った。
ラフマニノフはピアノ演奏、指揮、作曲のいずれにおいても成功を収めたが、すべてに同時に打ち込むことには困難を感じていた。後半生の演奏活動は作曲への集中力を妨げたのか、傑作は初期に多い。
ラフマニノフは、ピアノという楽器の可能性を最大限に引き出すことを追求しつづけた。 驚異的な演奏技術、人並みはずれた大きな手を持っていたと言われるが、自身のピアノ曲では技巧に終始するのではなく、哀愁や情熱を宿した美しい旋律を楽曲へと堅実に組み立てる方法を知っていた。チャイコフスキーを規範とし、あくまで長短調の枠にとどまって後期ロマン派の色彩と叙情性を継承している。
「ピティナ・ピアノ曲事典」より
第3回仙台国際音楽コンクール入賞。現在モスクワ音楽院で教鞭をとっている。